本紹介④ 湯浅誠 「反貧困」(岩波新書)
2008年、リーマンショックの時期に出されたもの。
非正規社員の増加、派遣労働者の増加という社会的背景。それは、国家や行政の役割を縮小し、規制の緩和、行政サービスの民営化といった新自由主義政策の流れの中、特に小泉政権の「構造改革」によって強化された。
企業が業績を増やしても格差が拡大し貧困が拡大する状況を作った。様々な理由から貧困に陥り社会から疎外され、社会のセーフティネットからも排除され、餓死したり自殺してしまった例も多数挙げられている。
さらに、リーマンショック時には、その派遣労働者が大量にクビをきられ、わずかな生活基盤すら失った。また、新自由主義思想にまみれた行政が、実際いかに人を抑圧しているかを感じることができる。生活保護申請に対する違法な拒否、<水際対策>も。逆に、それに対抗する運動や行政の中で奮闘されている人の姿も描かれる。
現在はどうだろうか。同じこと、さらにひどい現実が待っているのかもしれない。
「人間関係の貧困」という表現が印象に残った。まさに、今の「切り捨て社会」、「自己責任社会」の中、人がつながるコミュニティがないがしろにされ、人がともに社会を創る運動の場が弾圧され、産業以外の人間関係が断たれ、孤立化されられている。
それにどのように対抗していくかは、私たち在日朝鮮人運動の課題でもある。
具体的な現場の事例や対策について主に書かれているが、資本主義の本質について考 え、それに対抗する文化を創るためのきっかけとなる一冊。