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朝鮮学校高校「無償化」裁判についての学習会 ~広島、大阪、東京の判決の比較~②

・裁判における法律の重要な争点として、

1 (ハ)削除の違法性

2 規程13条適合性

が挙げられていました。が、

今回は、2つ目の規程13条適合性について書きます。

「規程」とは、前回論じた(ハ)の規程にもとづいて適用する際の基準を定めたものです。

13条は、「2章 指定の基準」の中にあり、(適正な学校運営)という条文で、

「指定教育施設は、高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営に適正に行わなければならない。」というものです。

 

前回に書いた通り、まず何よりも規定(ハ)の削除の問題が一番重要な争点であるということを確認しておきます((ハ)を削除し(ハ)がなくなってしまえば、そもそも「規程」自体の意味もなくなってしまうので)。

そのうえで考えたとしても、さらに、この規程13条の条項は、規程の中でも曖昧なもので、重要度は低いと考えられます。

その前の2条~12条までに具体的な基準が示され、一応それ以外の事が考慮されるべき時のための予備的な規定とみることができます。

なので、「適正な学校運営」という曖昧な基準が出てきていると考えられます。

 

国側は、(ハ)の削除がめちゃくちゃな暴挙であったことを認識し、この規程13条という曖昧な基準を持ち出し、基準に適合するとはいえないという論理を展開しました。

そして、その際に、教育基本法16条1項の「不当な支配」という条文を持ち出し、朝鮮学校が朝鮮と朝鮮総聯の不当な支配を受けているという主張を行いました。

 

教育基本法16条1項

「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律のさだめるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行わなければならない。」

 

教育基本法16条1項は、戦前の日本の教育が国家の支配の下、軍国主義または極端な国家主義的傾向を帯びる面があったことに対する反省からきているものであるにもかかわらず、その条項を利用し、国側は何とか朝鮮学校を除外しようと規程13条に結び付けてきた。

 

そして、広島と東京の判決では、国の論理をそのまま踏襲し、最も重要な争点である(ハ)の削除の違法性の判断から逃げたうえで、規程13条の基準に適合しないという結論を出しました。

さらに、東京判決は、文部科学大臣に無制限ともいえる広い裁量を認め、司法の役目を放棄したに等しい、国家権力にべったり癒着した姿を見せました。

 

それに対して、大阪判決では、

(ハ)削除の違法性をはっきりと論じ、教育の機会均等という法律の趣旨とは無関係な政治的外交的理由で規定を削除したことを違法、無効を断じた。

そして、規程13条適合性についても、「特段の事情」がない限り規程13条を充足するとしながら、「不当な支配」の判断についても、教育基本法の趣旨から文科大臣の裁量はないと結論付けた。

 

つまり、広島と東京の判決では、

(ハ)の削除は、国がめちゃくちゃな暴挙を断行したため守れないのであえて無視し、

規程13条という、曖昧でどうにでもとれる、どうでもよい条文を利用して国家権力にへつらった。最も重要な法の趣旨・目的を無視するという、明らかな暴挙を司法が行い、なおかつ偏見と憎悪に満ちた文章を並べた。

 

大阪判決では、(ハ)の削除についても、規程13条適合性についても、法の趣旨・目的にそった誰がどうみても当たり前な論理をもって、すっきりと判断した。

 

広島・東京の、理念も法の精神も目的意識も欠いたヘイト判決、論理破たん判決を受けて、やはり司法がいかに政治的であるか、国家権力・行政権力の圧力を受けていることを感じさせられました。

 

広島、大阪の判決は裁判所の判例検索にあがっています。

興味のある方は全文を読んでみてください。   (黄貴勲)

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