朝鮮学校無償化裁判の意義と今後の課題③ 大阪地方裁判所判決の意義
アンニョンハシムニカ!
少し空いてしまいましたが、前回の続きです。
朝鮮学校無償化裁判について
(11月21日、朝鮮統一支持 全国集会 講演会を参考に)
①,②は以下より
朝鮮学校無償化裁判の意義と今後の課題① 高校無償化からの朝鮮学校除外の経緯 - 留学同大阪ブログ
朝鮮学校無償化裁判の意義と今後の課題② 裁判で問われるべき本質的事項 - 留学同大阪ブログ
今回は、唯一の勝訴判決、大阪地方裁判所判決について。それも完全勝訴判決でした。
その中身を見ていきたいと思います。
【特筆すべき判断】(資料そのまま部分部分引用します)
「朝鮮総聯は、第二次世界大戦後の我が国における在日朝鮮人の自主的民族教育が様々な困難に遭遇する中、在日朝鮮人の民族教育の実施を目的の1つとして結成され、朝鮮学校の建設や学校認可手続きなどを進めてきたのであり、朝鮮総聯の協力の下、自主的民族教育施設として発展してきたということができるのであって、このような歴史的事情に照らせば、朝鮮総聯が朝鮮学校の教育活動又は学校運営に何らかの関わりを有するとしても、両者の関連が我が国における在日朝鮮人の民族教育の維持発展を目的とした協力関係である可能性は否定できず、両者の関係が適正を欠くものと直ちに推認することはできない。」
「朝鮮高級学校は、…中略… 民族教育にとって重要な意義を有し、民族的自覚及び民族的自尊心を醸成するうえで基本的な教育というべきである。」
「朝鮮高級学校が、朝鮮語による授業を行い、北朝鮮(ママ)の視座から歴史的・社会的・地理的事象を教えるとともに、北朝鮮を建国し、現在まで統治してきた指導者や国家理念を肯定的に評価することも、朝鮮高級学校の上記教育目的それ自体には沿うものということができ、朝鮮高級学校が北朝鮮や朝鮮総聯からの不当な支配により、自主性を失い、上記のような教育を余儀なくされているとは直ちに認め難い。」
つまり、朝鮮総聯と積極的な関係があろうと、朝鮮民主主義人民共和国を肯定的にとらえ、共和国の視点で教育を行っていても、「不当な支配」にはあたらない。
むしろ歴史的な経緯、朝鮮学校の教育目的に沿うものである。
ゆえに、無償化適用の可否に関わる問題ではない。当然適用されるべき。
ということを言っていると思います。
さらに、以下、争点を2つみていきます。
<争点1> 本件規定(省令)削除の違法性について
本件省令とは?
(イ)外国の学校課程と同様の過程
(ロ)文科大臣が指定する団体の認定による指定
(ハ)文科大臣が定めるところにより高等学校の課程に類する課程を置くものと認められる者
と規定した中での(ハ)条項のことを指す
大阪地裁判決は、この規定(ハ)を削除したことを違法であると判断した。
その理由として、文科大臣が外交的・政治的意見に基づき朝鮮学校を支給法の適用対象から除外するために削除し、それが高校無償化法の趣旨に逸脱するとした。
つまり、そんなこと(規定(ハ)削除)が当然許されるはずがないということ。
<争点2> 原告(大阪朝鮮学園)の本件規定13条適合性について
規定13条とは?
支援金支給にあたって、授業料に充当される、また法令に基づく適正な運営がなされているかを定めたもの。
国側は、「不当な支配」(教育基本法16条)を持ち出し、朝鮮学校において適正な運営がなされていないと主張。
それに対して大阪地裁は、
①特段の事情がない限り、適正な運営がなされているとみるべき。朝鮮学園に関しても実績からも認められる。
②無償化法は、生徒等の受給権として規定しており司法的救済の要請は高い
③「不当な支配」とは、軍国主義的または極端な国家主義的傾向への反省であり、教育に対する権力的介入、特に行政による介入を抑制すべきもの。 「不当な支配」の有無について文部科学大臣の裁量はない。
つまり、特段の不正が無いかぎり支給されるべきであり、そこに「不当な支配」の論理を持ち出すべきではないということ。
<争点1>においても<争点2>においても、国の主張を斥け、原告の主張を全面的に認めた判決といえます。
そして何よりも、朝鮮総聯、朝鮮学校について、裁判所が初めて判断・評価をし、その歴史性・政治性について、民族教育の意義について、祖国との関係について論じたという点が画期的であったといえます。
しかし、よくよく考えると、大阪地裁判決は当たり前のことを言っているだけです。
読めば読むほど、当然のこと、普通のことです。
この判決が「画期的」であるということが日本社会の思想・理論的水準の低さの証左というべきではないでしょうか。
そして、地裁、高裁の10の判決の中でこの普通の判決が1つしか出ていないのです。
以後、大阪高裁判決の酷さにについて書きたいと思います。