高校「無償化」裁判についての学習会 ~広島、大阪、東京の判決の比較~①
2017年10月17日、朝鮮学校高校「無償化」裁判、地裁判決についての学習会に参加しました。
・裁判における法律の重要な争点として、
1 (ハ)削除の違法性
2 規程13条適合性
が挙げられていました。
ここでは、(ハ)削除の違法性について書きます。
※規程13条については次回に。
(ハ)とは、高校無償化法の施行規則の中にあります。
施行規則とは、法律を具体的に実施するための細かいことを書いたものです。
(ハ)とは、施行規則第一条第二項にあり、各種学校に高校無償化法を適用する際に「文部科学大臣が定めるところにより、高等学校の課程に類する課程を置くものとして、文部科学大臣が指定したもの」というものです。
簡単にいうと、各種学校のうち、客観的に見て日本の高等学校相当になるものには適用しましょうということです。
朝鮮学校は、この(ハ)によって申請し、高校無償化制度の適用を受けられるはずでした。
しかし、自民党政権になり、この(ハ)自体が削除され、ゆえに朝鮮学校は適用されないことになりました。
よって、裁判において、この(ハ)を恣意的に削除したことが最も重要な争点になるはずでした。
しかし、広島判決、東京判決では、この(ハ)削除の違法性については触れられていません。
大阪判決では、ハ削除の違法性については、政治的外交的意見に基づいてハを削除したため、本来の高校無償化法の趣旨に反するので(ハ)の削除は違法、無効であると述べています。つまり、大阪判決では、(ハ)の削除が無効なので、(ハ)は復活するということになります。
本来、(ハ)を削除したことで朝鮮学校が不適用となったので、裁判でもその点がまず論じられるべきでした。しかし、広島と東京の判決はその判断をせず、二つ目の争点「規程13条適合性」のみ判断し判決を下しました。
規程13条適合性については次回書きますが、これは本来考慮されておらず突然国側が出してきた論点です。
教育に係る経済的負担の軽減を目的とした高校無償化法において、(ハ)の削除はどう考えても問題が大きいと言えます。趣旨からして、わざわざ適用の範囲を狭くするようなことをする必要はなく、してはいけないことであるため。
また、下村文部科学大臣も自民党の議員も拉致問題についてや、朝鮮総聯との関係についてなど、そもそも考慮されるべきでない理由を持ち出して(ハ)の削除に踏み切ったため、国側もその問題性は十分に理解していたはず。
ハを削除したのなら要件適合性の議論はしなくてもよいはずなのに、国側が不指定の理由として、規程13条の不適合をつけてきたということがその証拠といえるだろう。
無償化法の土台だけでは、朝鮮学校を除外することなど絶対にできないため、(ハ)削除の違法性の議論をそらし、規程13条適合性の議論に持ち込もうとした。
そして、広島と東京では、国の意向を忖度した裁判所がその土台に乗って、国の言い分を全面的に認め、朝鮮学校に無償化制度を適用しないことを違法ではないという結論を下したのである。
広島、東京の例からまとめると、
(ハ)の規定から朝鮮学校が適用されることが明らかであった。
→ 民主党政権がそこに踏み出せずジタバタしてる間に崩壊した。
→ そもそも適用する気のない自民党政権が無理やり除外を強行した
→ 権力の意向を忖度した裁判所が無理やり国を勝たせるための判決を出した。
広島と東京の判決があえて無視した(ハ)削除は、どう考えてもとてつもなく無理やりすぎて、国にべったりの裁判官ですら触れられなかったくらい極めて不当で不法な行為であったといえることができると思います。
※「規程13条適合性」と、大阪判決については、追って書きたいと思います。
(黄貴勲)