2020年度 研究誌【在日朝鮮人運動への提言】販売 (2019年度版も残っています)
2020年度 留学同大阪研究誌
【在日朝鮮人運動への提言 -「ウリマル」「祖国」「日本」-】
が完成いたしました。
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冊子内容は、
以下の記事を是非ともご参照ください。
【在日朝鮮人運動への提言 ―「ウリマル」「祖国」「日本」―】 論文完成/対外講演会終了後、雑感① - 留学同大阪ブログ
民族性の喪失=従属 【在日朝鮮人運動への提言 ―「ウリマル」「祖国」「日本」―】 雑感② - 留学同大阪ブログ
「祖国とは、このようなすべてのことが起こってはいけないところ」 論文執筆、講演会終了後雑感③ - 留学同大阪ブログ
「祖国とは、このようなすべてのことが起こってはいけないところ」 論文執筆、講演会終了後雑感③
前回、前々回の続きです。
最後に、「ウリマル」、「祖国」というキーワードについてまとめたいと思います。
「ウリマル」:
ウリマルとは、自分たちの言葉。自分たちの「ことば」を取りもどさなければならない。
それがまさに朝鮮語そのものであり、朝鮮民族の闘争の歴史そのものであり、私たちが祖国を語ることばである。いいかえるなら、それは知性であり、思想であり、信念である。
資本主義・帝国主義権力は、「祖国」とともに、「ウリマル」に対して弾圧を加える。ことばを攻撃し奪うことで、抵抗の芽をつみ民族まるごと支配しようとしたのが日本帝国主義である。
自分たちの「ことば」=朝鮮語・朝鮮の歴史・朝鮮民族の尊厳を抑圧し抹殺しようとする権力と対峙し真っ向から抵抗し、自分たちのことばを取りもどし、自分たちの歴史を取りもどすこと。それこそが在日朝鮮人が「ウリマル」を学ぶ意義といえるのではないだろうか。
「ウリマル」なくして歴史を取りもどすことはできない。自分たちのことばをなくして植民地主義からの解放はありえない。
祖国統一の問題と、ウリマルの問題はつながる。
資本に思想意識まで従属させられた人間が祖国を語ることはできない。今まさに従属させられているからこそ、今の自分たちは祖国を語ることができないのかもしれない。
「ウリマル」を失っているために、その歴史性と政治性を脱色されたものしかもたないために、祖国を語ることばを持たないのかもしれない。
「祖国」:
二つ目の論文に書かれているように、「祖国とは、支配され抑圧され分断させられてきた朝鮮民族が、無条件に肯定される場所」と定義づけた場合、その場所を得るためには、それを疎外する力との闘争が不可避となる。祖国とはそういう意味で、地理的意味のみが込められた存在ではなく、歴史的政治的な意味が全面に現れる存在である。朝鮮民族の語る「祖国」とはそういった意味が必然的に含まれる。
「祖国とは、このようなすべてのことが起こってはいけないところ」
と、ガッサン・カナファーニーは、パレスチナの破滅的な現実を前に書いた(『悲しいオレンジの実る土地』より)。
私たち朝鮮民族にとってはどうだろうか? 分断・戦争・支配・従属、祖国とはこのようなすべてのことが起こってはいけないところと声を大にして言うべきだろう。
韓国はどうか?共和国はどうか? 北か南か、分断志向で祖国を語るなという声が聞こえてきそうだが、大事なのはその内実である。北・南で語るつもりなど在日一世の語りにはそもそもないし、そう思考させようとする力に常に抗うべきである。しかし、そのうえで、自主を求める人民の闘争の歴史、階級闘争の歴史として自分たちは主体的に認識を深め自己を鍛えていかなければならないと考える。
「祖国」と語ることばを持たないということは、資本の論理にからめとられる。従属させられる。なぜなら、朝鮮民族を支配し抑圧し分断させ、朝鮮の自主独立国家建設を阻害したものこそ、資本主義・帝国主義権力であるためである。
私たちは祖国をこそ語るべきである。私たちこそ祖国を語るべきである。
民族性の喪失=従属 【在日朝鮮人運動への提言 ―「ウリマル」「祖国」「日本」―】 雑感②
前回の続きです。
前回、私たちが「祖国統一」を語ることばを持たないという問題提起をしました。
それは、経験・機会・感性を奪われているとともに、自分たちがすすんで放棄してしまっているのではないかと。
【在日朝鮮人運動への提言 ―「ウリマル」「祖国」「日本」―】 論文完成/対外講演会終了後、雑感① - 留学同大阪ブログ
そうした、自己点検・総括を無くした結果、そもそも「ことば」を持たなくなってしまった。これこそ、「ウリマル」のテーマにつながる部分だと考える。
自分たちが「民族」、「社会」、「世界」「人間」を語ることばを持たない。人間性を語る、人間の根本、尊厳、理念を語ることばをもたない。
日常の中に中身のあることばがない。言いかえれば、知性がない。思想がない。信念がない。軸がない。世界観にもとづいた人生観がない。また、それを育む社会がない。学ぶ機会と可能性、考える機会と可能性を奪われている。その場だけの、自分だけの安楽にからめとられ、自らその地獄に笑いながらすすんで飛び込んでいく。
ゆえに、「資本」の論理にからめとられる。資本の従属物と化す。ビジネスシーンで役に立つ、お金儲けにつながるという「ことば」だけが必要とされる。
また、中身のない情報、消費のみを目的としたことばがマスメディアを通じて氾濫する。
在日朝鮮人運動の歴史と伝統、同胞社会など無意味なもの、無価値なものという意識を植えつけられる。理念を熱く語ることが冷笑され、キャラ付けされ、相対化と市場化のもと殺される。
資本の論理にからめとられるということと、在日朝鮮人がウリマルから離れていくということは連動する。同時に、歴史性を帯びた「ウリマル」ではなく、正しい「韓国語」を身につけようとする動きにもつながる。それは「ウリマル」に関する論文で述べられていることである。
それは、
①そもそも日本の権力によって歴史性・政治性をおびた「ウリマル」は疎まれ消し去られようとしているため、
②米国を中心とした世界資本主義秩序の中で、「朝鮮」ではなく「韓国」が求められるため(なぜなら、朝鮮は世界資本主義にアンチをとなえ自主をかかげる一方、韓国は経済的政治的軍事的に米国や日本の従属化にあるため)、
という理由からいえるだろう。
朝鮮民族にとって、目の前に存在する資本主義権力とは何か? 在日朝鮮人の自主性、自主的民族教育を阻害する力は何か?
それは、米帝国主義であり、日本帝国主義であり、それらに従属する大韓民国権力である。大韓民国権力は、植民地支配期の親日派、解放後の親米派に根を持ち、現在も権力の中枢を占める。文在寅政権も決してそこから離れたものではない。そして、米帝、日帝、それに従属する韓国政府こそ、朝鮮半島を分断させた張本人である。
在日朝鮮人が「ウリマル」から疎外され、みずから「ウリマル」を疎外してしまうことと、日本の植民地主義の問題・朝鮮半島の分断の問題は直結する。私たちは朝鮮民族の自主独立を求めるのか、資本主義・帝国主義勢力に従属するのか、常にそのはざまに生きている。
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つづく
【在日朝鮮人運動への提言 ―「ウリマル」「祖国」「日本」―】 論文完成/対外講演会終了後、雑感①
2021年2月28日、留学同大阪対外講演会「在日朝鮮人運動への提言―「ウリマル」「祖国」「日本」―」を開催しました。
①「ウリマル」の可能性、
②「祖国統一」と在日朝鮮人の主体性
という二つのテーマで、学生たちが発表をし、それに対して多くの質問や意見を出していただき、活発な議論が行われました。学生たちが発表した内容は、冊子「在日朝鮮人運動への提言ー「ウリマル」「祖国」「日本」ー」の論文にまとめられています。
そのうえで、質疑応答の内容も含め、講演会終了後の感想を何度かに分けてまとめたいと思います。
「祖国統一」を語ることばを持たない。
まず、はじめに感じたことは、自分たちの中に「祖国統一」がないということ。
「祖国」、「祖国統一」というテーマを持ち出されたときに、ことばを持たないというのが私たちの現状といえる。それは在日朝鮮人社会全体にとってはどうだろうか。祖国との関係が自分たちの生活や生き方にどのように影響するのか。意識的に生きている在日朝鮮人がどれだけいるだろうか。
「民族意識の希薄化」が語られる。
それは日本政府による民族抹殺政策のもたらしたものである。日本の権力の朝鮮学校への攻撃、在日朝鮮人の自主的な民族教育への弾圧をみれば明らかである。その中でも、「祖国」が真っ先に攻撃の対象にあげられる。祖国との関係を断つように、祖国の歴史、民族解放闘争=祖国の独立運動の歴史が問題視される。そうした観点から、在日朝鮮人が祖国との関係を自ら断ったとき、日本帝国主義の在日朝鮮人への同化政策は完成するといえる。
それに対して、私たちはどのように立ち向かうべきだろうか。二つ目の論文では、在日朝鮮人一世・二世の感情、経験、思想に着目した。一世、二世の同胞の中には、条件反射的に「祖国」、「統一」という言葉が出てくる人たちがいます。無意識に当たり前に「祖国」を語られる。
在日朝鮮人三世、四世が「祖国」「祖国統一」意識が薄くなっているのはなぜだろうか?「経験」がないのか?「認識」がないのか? 経験や認識をする機会がないのか?
学ぶ機会が失われていることは一つの事実だろう。しかし、それだけではない。私たちは、自らすすんで「祖国」に背を向けてはいないだろうか。日本社会の空気を読み、資本主義社会の波に乗るために、それに抵抗する性格をもつ「祖国」を積極的に見ないようにしていないだろうか。「祖国」の議論を積極的に避けてはいないだろうか。朝鮮民族の歴史、尊厳、理念を冷笑し、ないがしろにしてはいないだろうか。
論文執筆、講演会準備を通じて、改めて自分たちの生活・行動・実践・思想を今一度ふりかえる必要があると思いました。熱い心と、冷静な頭脳をもって。
祖国統一から在日朝鮮人の主体性を考える 2月28日(日)講演会の問題意識②
アンニョンハシムニカ!
2月28日(日)14:30~ 留学同大阪対外講演会
前回に引きつづき、発題に関する問題意識について紹介します。
是非とも、当日現場での議論にご参加いただければと思います。
以下、発表者作成。
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<祖国統一から在日朝鮮人の主体性を考える 趣旨>
私たち留学同大阪、国際統一部は、この一年間祖国統一について深める作業を特に行ってきた。その作業の中で、祖国統一と在日朝鮮人の主体性が大きく関わるのではないかと着目するようになる。
在日朝鮮人は日本という異国で生まれ、育ち、生きている朝鮮人である。私たちが住む日本という国は、ナショナリズム的思考が強い傾向があり、在日朝鮮人の歴史的背景を無視して、差別し排除しようとしている。そのような状況で祖国を感じ、在日朝鮮人として堂々と生きるのは難しく、祖国を感じられずに生きる在日朝鮮人がたくさんいるというのが現状である。
祖国を感じられず、祖国統一について自身の問題だと認識できない在日朝鮮人は、自身の民族を自ら破棄し、日本人であるかのように生きるようになる。この過程で在日朝鮮人としての主体性を失っていくのではないかと分析した。
講演会では、「祖国統一」と「在日朝鮮人の主体性」の関連性を大きく三つの側面からみてみる。
一つ目は在日朝鮮人の歴史的経緯、日本との関係性から考察する。
二つ目は世代を繋ぐ中で生まれた祖国に対する考えの相違から考察する。
三つ目は実際の在日朝鮮人たちに祖国に対する姿勢などのインタビュー結果から考察する。
以上の三つの考察から祖国統一問題から今を生きる在日朝鮮人の主体性を問う。
私たちの在日朝鮮人運動の根源は何なのか、在日朝鮮人の主体とは何なのか、この講演会を通して、今一度考えてみてほしい。
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