【ラス・カサス「インディアスの破壊についての簡潔な報告」③】
ラス・カサス「インディアスの破壊についての簡潔な報告」、第三弾です。
本書の内容は前回までで、今回は補足説明として。
「現代人の思想17 民族の独立」という書籍に言及があります。
そこで、ラス・カサスの報告について触れられています。
[http://
|
:title]
スペインによる蛮行、ヨーロッパによる蛮行は、前回までに書いた通りです。
そのうえで、重要な点をピックアップします。
歴史の否認
ーーーーーーーーーーーー
「植民地主義は、その開始の40年間にすでに、もっとも典型的なかたちで、その暴力的な本質をむき出しにしているのである。
だから、その後の400年間にわたる否認のための努力は、専ら植民地主義そのもののもつ暴力的な本質の否認にそそがれることになる。」
植民地支配を「文明化/近代化」=「恩恵」にすりかえようとする努力
=歴史修正主義 について書かれています。
ラス・カサスのこの「報告」自体、闇に葬られようとし、ラス・カサス自身が攻撃の対象となり、「狂人」として扱われたことがその証左ともいえます。
植民地主義は、現実のむき出しの暴力だけでなく、理論・認識の世界においても作動し弾圧をくり返します。
奴隷制と資本主義の発展
ーーーーーーーーーーーーー
「はじめは奴隷農園というものはなかったのだ。自由な農民と年季奉公をおえて自作農になった農民社会があった。ところが、こういう社会が実におどろくべき早さで巨大な奴隷農園となり、奴隷売買がさかえ、農園の主要産物に対するヨーロッパの市場が確保されるや否や、資本は流れ込んできた」
「奪いとられた土地から、アフリカ渡来の奴隷たちによって産出された富は、ヨーロッパの首都へ向けて巨大な川のように流れていき、そこで幼少期の工業に養分を与え、ヨーロッパの大金持ちの家族というものの基礎を作り、大学とか、図書館とか、博物館、交響楽団などという文化文明の成長と拡充を支えることになった。」
(以上、二つの引用は、「民族の独立」内の言及、イェール大学・カリブ海研究班の報告より)
つまり、ヨーロッパによる侵略、略奪、搾取、支配によって、「新大陸」から本国へ膨大な富がもたらされ、資本主義の発展、文明の発達を支えたということがいえます。
「新大陸」での殺りく、収奪、搾取のうえに、アフリカからの奴隷制によって、それがさらに加速します。
帝国主義国の富は、われわれの富である
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「帝国主義の富は、われわれの富でもある。ヨーロッパを窒息させるほどの富は、後進諸国の人民から盗み取られた富だ」(フランツ・ファノン)
現代に続く問題として
ーーーーーーーーーーーー
「問題の基本と核心は、400年来、いっこうに変わっていない」
「『自由』というものを君たちにさしあげるのだといって、ナパーム弾を投げている米軍」
「『開発』だの『発展』だの『援助』だのという、20世紀が発明した植民地主義」
「植民地主義というものが行った人間侮辱、無視、虐殺、殺りく、搾取、隷属、奴隷化、その他のありとあらゆる悪徳と矛盾が、その開始のまさにその瞬間から内蔵されており、それがつづく限りにおいて、今日においても未来においても内蔵しつづけるものである。」
今日でも、経済的支配・従属関係は維持されています。
帝国主義、植民地支配政策はもちろん、第二次世界大戦後、政治的には「独立」したといわれながら、経済的従属関係、さらに軍事力による支配は継続している。
特に、アメリカの世界支配、侵略政策は現在においても、より加速しているというべきでしょう。
日本の植民地主義
ーーーーーーーーーーーーーー
上記の構造は、日本にもそのまま当てはまります。
朝鮮侵略、台湾植民地支配、中国、東南アジアへの侵略。
朝鮮侵略の過程においても、
甲午農民戦争での「ことごとく殺戮」、義兵戦争での虐殺、3・1虐殺、間島虐殺、関東大震災時の虐殺、15年戦争期の強制連行・強制労働、姓奴隷制度、など、
ラス・カサスが描いたスペイン人の蛮行に匹敵する事実がいくらでも出てきます。
世界史的な蛮行:植民地主義・帝国主義・人種主義、支配・従属の問題として。
今にも続く経済支配・軍事支配、資本主義の構造・思想・文化の問題として。
それに対してどのように抵抗していくのか。
「民族の独立」では、フランツ・ファノンやマルコム・エックス、チェ・ゲバラ、カストロ、毛沢東、といった革命家の論考をもって応えようとしているように感じます。
おすすめの一冊です。